暖房は燃費だけでは測れない
―― それでも「燃費」は知っておきたい
暖房器具を比べるとき、
多くの人がまず気にするのは「燃費」、
つまり 暖房コスト(円/kWh) です。
しかし実際には、
燃料の価格だけを比べても、
**本当の意味での「暖かさ」**は比べることは出来ません。
その理由は、暖房の評価には次の3つの要素が同時に関わるからです。
・燃料単価(燃料そのものの値段)
・熱効率(投入したエネルギーをどれだけ暖房として使えたか)
・体感の暖かさ(人が実際にどう感じるか)
この記事では、
燃費の前提となる 熱効率(カタログ値) と
各燃料が本来持つ熱量を整理しながら、
体感・住宅性能との相性・実際の使い勝手まで含めて暖房を比較します。
暖房コスト(燃費)の前提
ここで使う燃費とは、
1kWh の暖房熱を得るために必要なコスト(円/kWh)で見ていきます。
この考え方を理解するには、
まず 燃料そのものが持つ熱量 を知る必要があります。
1)エアコン(ヒートポンプ式)
特徴と燃費
・電気代:約40円/kWh
・COP:約3.0〜4.0
・実質燃費:約11円/kWh
※エアコンは燃料を燃やさず、
外気の熱を移動させる方式のため、
燃料の「発熱量」ではなく COP で評価されます。
利点
・燃費が安い
・操作が簡単
・導入コストが比較的低い
欠点・制約
・外気温が下がるとCOPが急激に低下
・寒冷地では暖房能力が不安定
・温風中心で足元が冷えやすい
・古民家や気密の低い住宅では暖気が逃げやすい
・停電時は使用不可
👉 高断熱住宅向きだが、住宅性能に強く依存する暖房
2)石油ストーブ(灯油)
灯油が持つ熱量
・灯油 1L ≒ 約10kWh
非常にエネルギー密度が高く、
少量で大きな熱を生み出せる燃料です。
特徴と燃費
・灯油:約110円/L
・熱効率:約85〜95%
有効に使える熱量
・10kWh × 0.9 ≒ 約9kWh
実質燃費
・110円 ÷ 9kWh ≒ 約12〜14円/kWh
利点
・炎の輻射熱で体が直接暖まる
・断熱性能が低い住宅でも使いやすい
・停電時でも使用可能な機種が多い
欠点・制約
・換気が必要
・給油の手間で汚れる
・灯油価格の変動
・匂いがするので苦手な人も多い
👉 「燃料の熱量」がそのまま体感につながりやすい暖房
3)ガスファンヒーター(LPG・プロパン)
LPG が持つ熱量
・LPG 1kg ≒ 約12.8kWh
・LPG 1m³(気体換算)≒ 約25kWh
熱量は非常に大きい燃料です。
特徴と燃費
・LPG価格:地域・契約で大きく変動
・実質燃費:約20円/kWh 前後
利点
・着火が早い
・操作が簡単
・短時間で部屋を暖められる
欠点・制約
・燃料単価が高くなりやすい
・温風中心で体感が弱い
・隙間の多い住宅では効率が出にくい
・ガス供給契約に依存
・停電時は使用不可
👉 熱量は大きいが、空気暖房のため体感効率が伸びにくい
4)ペレットストーブ
ペレットが持つ熱量
・木質ペレット 1kg ≒ 約4.8kWh
薪よりも水分量が管理され、
燃料として非常に均一です。
ペレットストーブが燃費に優れる理由
・小さな燃焼炉で着火
・ペレット供給量と空気量を自動制御
・常に燃焼に最適な空気比を維持
これが、高い熱効率につながっています。
特徴と燃費
・ペレット:60〜80円/kg
・熱効率:約85〜95%
有効熱量
・4.8kWh × 0.9 ≒ 約4.3kWh
実質燃費
・70円 ÷ 4.3kWh ≒ 約16円/kWh
利点
・燃焼が安定し、24時間稼働も可能
・輻射+穏やかな対流で体感が良い
・断熱性能が低めの住宅でも効きやすい
・薪より手間が少ないく炎が楽しめる
・煙がほどんど出ないので都市部でも使える
欠点・制約
・電源が必要
・機械部品のメンテナンス
・導入コストはやや高め
👉 「構造そのものが燃費を生む」暖房
5)薪ストーブ
薪が持つ熱量
・乾燥薪 1kg ≒ 約4.0kWh
含水率が高い薪では、
この熱量は大きく下がります。
特徴と燃費
・薪購入:約85円/kg
・実質燃費:約30円/kWh
しかし――
薪を自分で調達できれば、
燃料費は実質0円
という大きな特徴があります。
利点
・圧倒的な輻射熱
・薪ストーブ本体も蓄熱し、冷めにくい
・断熱・気密が低い古民家と非常に相性が良い
・停電時でも使用可能
・燃料自給が可能
・家族が炎のもとに自然と集まる
欠点・制約
・煙突設置が必要で設置コストが高い
・煙突からの煙が住宅密集地では問題になりやすい
・薪の準備・乾燥の手間
・焚き方で性能差が出る
👉 自給する方なら元が取れる暖房
暖房方式を整理すると
・エアコン
燃費:安い
住宅相性:高断熱住宅向き
・石油ストーブ
燃費:良好
住宅相性:幅広い
強み:高い燃料熱量
・ガスファンヒーター(LPG)
燃費:高め
住宅相性:気密必須
弱点:体感効率
・ペレットストーブ
燃費:中
住宅相性:幅広く適応する
強み:体感+炎のやすらぎ
・薪ストーブ
燃費:購入薪なら高め
住宅相性:古民家や古い家には最適
強み:炎のやすらぎ+燃料自給可能
結論:燃費は表面的、本質は家とその暮らしとの相性
・燃費は重要
・しかし数字だけでは測れない部分がある
・燃料の熱量と体感が非常に重要な要素でもある
特に、
・断熱・気密が低い家
・古民家
・寒冷地
・長時間使用
こうした条件では、
空気暖房より、輻射主体の暖房が圧倒的に有利になります。
燃費を理解したうえで、
自分の家と暮らしに合った暖房を選ぶこと。
それが、後悔しない暖房選びです。